1.毒物の分類および解毒剤
毒作用の種類具体的な作用内容毒物・劇物の例
毒作用の種類 具体的な作用内容 毒物・劇物の例
中枢神経抑制作用 | 意識消失、昏睡、呼吸抑制 | バルビツール酸系薬物、アルコール |
中枢神経興奮作用 | けいれん、幻覚、興奮状態 | アンフェタミン、ストリキニーネ |
呼吸抑制作用 | 呼吸中枢の麻痺、呼吸停止 | モルヒネ、シアン化合物 |
呼吸促進・興奮作用 | 過呼吸、けいれんによる呼吸困難 | ニコチン、カフェイン |
血液障害作用 | メトヘモグロビン血症、溶血 | アニリン、ナイトライト化合物 |
肝障害作用 | 肝細胞の壊死、黄疸 | 四塩化炭素、パラセタモール(大量) |
腎障害作用 | 尿細管壊死、尿毒症 | カドミウム、クロム化合物 |
消化器障害作用 | 嘔吐、下痢、胃腸炎症 | ヒ素、硫酸、塩酸 |
心臓毒性作用 | 不整脈、心停止 | 強心配糖体(ジギタリス)、ベラドンナアルカロイド |
発がん性 | 長期曝露でがんを誘発 | ベンゼン、アスベスト |
催奇形性 | 胎児の奇形や発育障害 | サリドマイド、メトトレキサート |
皮膚・粘膜刺激 | 炎症、潰瘍、化学熱傷 | 苛性ソーダ、アンモニア |
毒物・薬物名解毒剤(拮抗薬)解説
毒物・薬物名 解毒剤(拮抗薬) 解説・作用機序例
アセトアミノフェン(パラセタモール) | N-アセチルシステイン(NAC) | グルタチオンの前駆体として作用し肝障害を防ぐ |
モルヒネ、ヘロインなどのオピオイド | ナロキソン | オピオイド受容体拮抗薬 |
ベンゾジアゼピン類(ジアゼパムなど) | フルマゼニル | GABA受容体拮抗薬 |
メタノール、エチレングリコール | エタノール、フォメピゾール | アルコール脱水素酵素に競合阻害 |
シアン化物(青酸) | ヒドロキソコバラミン、チオ硫酸ナトリウム | シアンと結合し無毒化、または代謝を促進 |
有機リン系殺虫剤 | アトロピン、プラリドキシム(PAM) | ムスカリン受容体遮断+アセチルコリンエステラーゼ再活性 |
鉛 | Ca-EDTA(カルシウムEDTA) | キレート作用で鉛を排出 |
鉄 | デフェロキサミン | 鉄と結合し可溶性複合体として排出 |
ヒ素 | ジメルカプロール(BAL) | キレート剤として無毒化 |
ワルファリン(抗凝固薬) | ビタミンK(フィトナジオン) | 凝固因子合成を助けて作用を拮抗 |
2.毒劇物の性質
主な毒物の名称性状主な用途毒性・特徴
名 称 | 性 状 | 主な用途 | 毒性・特徴 |
黄燐(ようりん) | 淡黄色の固体、空気中で自然発火、強いにおい | 火薬、マッチ製造 | 肝障害、腎障害、骨壊死、強い毒性 |
青酸カリ(シアン化カリウム) | 白色の結晶、水に可溶、有毒な青酸ガス発生 | 金属の電解メッキ、鉱石の精錬 | 非常に強い毒、呼吸中枢麻痺 |
シアン化ナトリウム | 白色結晶、苦杏仁臭、水に溶け青酸を放出 | 金の抽出、メッキ | 呼吸停止を引き起こす、猛毒 |
シアン化カリウム | 同上(青酸カリ) | 同上 | 同上 |
水銀(Hg) | 銀白色の液体金属、揮発性あり | 温度計、蛍光灯、触媒 | 中枢神経障害(振戦、幻覚)、慢性中毒 |
塩化第二水銀(HgCl₂) | 白色結晶、水に溶ける | 防腐剤、消毒薬 | 腎毒性、消化器障害、皮膚吸収でも中毒性あり |
硝酸第一水銀(Hg₂(NO₃)₂) | 白色または黄色結晶 | 写真材料、触媒 | 腎障害・神経毒性 |
酸化第二水銀(HgO) | 赤または黄色の粉末、高温で分解 | 乾電池、触媒 | 加熱で有毒な水銀蒸気を発生、吸入に注意 |
塩化第一水銀(Hg₂Cl₂) | 白色粉末、水に難溶 | 下剤(昔)、防腐剤 | 神経毒性、使用中止されている |
セレン(Se) | 赤~灰黒色の固体、金属光沢、においあり | ガラス着色、半導体材料 | 過剰摂取で神経障害、肝障害、脱毛など |
亜セレン酸ナトリウム(NaHSeO₃) | 白色結晶、水に可溶 | ガラス製造、化学合成 | 非常に毒性が強い、呼吸器や肝臓障害を引き起こす |
セレン酸(H₂SeO₄) | 無色液体、強酸性、酸化力強い | 酸化剤、分析試薬 | 強酸性で腐食性、吸入・経口で重篤な障害 |
二酸化セレン(SeO₂) | 白色または淡黄色結晶、刺激臭 | 酸化剤、化学合成中間体 | 肺毒性、吸入で呼吸障害、目や皮膚刺激 |
名称 性状 主な用途 毒性・特徴
ヒ素(As) | 灰黒色の固体、金属光沢、無臭 | 半導体、合金、農薬の原料 | 発がん性、中枢神経障害、慢性中毒 |
水素化ヒ素(アルシン, AsH₃) | 無色気体、ニンニク臭、空気より重い | 半導体製造、化学合成 | 極めて有毒、溶血性、呼吸困難、腎不全 |
三酸化二ヒ素(As₂O₃) | 白色粉末、水にやや溶ける | 殺鼠剤、木材防腐剤、染料 | 非常に強い毒性、皮膚や粘膜刺激、致死量が低い |
フッ化水素(HF) | 無色刺激臭のある気体、空気中で白煙を発生 | 半導体洗浄、エッチング、化学合成 | 重度の皮膚・粘膜損傷、骨への蓄積、中毒死もある |
フッ化水素酸(HF水溶液) | 無色透明液体、腐食性が極めて強い | ガラスエッチング、洗浄剤 | 接触で深部組織壊死、強力な全身毒性 |
EPN | 無色~淡黄色液体、有機リン系殺虫剤 | 農薬(昆虫駆除) | アセチルコリンエステラーゼ阻害、中枢神経症状 |
パラチオン | 黄褐色油状液体、有機リン系殺虫剤、揮発性あり | 農薬(使用制限あり) | 猛毒、神経毒性、皮膚吸収で致死もあり |
メチルパラチオン | 淡黄色液体、ややにおいあり、有機リン系殺虫剤 | 農薬(使用禁止または制限) | 中枢神経抑制、呼吸抑制、皮膚吸収でも毒性強い |
主な劇物の名称性状主な用途・特徴
物質名 性状 用途
塩化亜鉛 | 無色〜白色の結晶、潮解性があり水に溶けやすい | 木材防腐剤、はんだ付けフラックス、染色助剤、消毒剤 |
硝酸亜鉛 | 無色の結晶または白色粉末、水に非常によく溶ける | 染料製造、織物の媒染剤、化学試薬、触媒 |
硫酸亜鉛 | 無色の結晶、苦味があり水に溶ける | 医薬品(収れん剤、殺菌剤)、電気めっき、肥料、繊維処理 |
三酸化アンチモン | 白色の粉末、水に難溶、酸やアルカリに溶ける | 難燃剤、顔料、ガラスやセラミックの製造、触媒 |
三塩化アンチモン | 白色または灰白色の結晶性固体、水分と反応して塩酸ガスを発生 | 有機合成用触媒、化学反応剤、ガラス研磨、半導体分野 |
酒石酸アンチモニルカリウム | 白色結晶または粉末、水に可溶 | 催吐剤(現在は使用制限)、分析試薬 |
塩素酸ナトリウム | 無色または白色結晶、強い酸化性、水に溶けやすい | 漂白剤、除草剤、花火・爆薬の酸化剤 |
塩素酸カリウム | 白色結晶、強い酸化性、水に溶けにくい | 花火、マッチ、爆薬の酸化剤 |
過酸化水素水 | 無色の液体、強い酸化力をもつ、水と混和可能 | 消毒剤、漂白剤、ロケット推進剤、排水処理 |
硫化カドミウム | 黄色~オレンジ色の粉末、不溶性 | 顔料(カドミウムイエロー)、蛍光材料、光電材料 |
酸化カドミウム | 白色または褐色の粉末、熱により黄色に変色 | セラミック、顔料、太陽電池、半導体材料 |
硝酸カドミウム | 無色~白色の結晶、水に可溶 | 顔料製造、めっき、化学試薬 |
硝酸銀 | 無色または白色の結晶、水に可溶、光で分解 | 感光材料(写真)、消毒剤、鏡製造、化学分析 |
硫酸銀 | 白色結晶性粉末、水に溶けやすい、光により黒変 | 写真材料、触媒、抗菌剤 |
クロム酸ナトリウム | 黄色結晶または粉末、水に溶ける、強い酸化性 | 染料、木材防腐剤、皮なめし、めっき処理 |
クロム酸鉛 | 黄色〜橙色の粉末、不溶性、毒性あり | 顔料(鉛クロムイエロー)、防錆塗料 |
ケイフッ化水素酸 | 無色液体、水に可溶、強い腐食性・毒性 | ガラスエッチング、半導体洗浄、金属表面処理 |
ケイフッ化カリウム | 白色結晶、水に溶けやすい、腐食性 | 農薬、除草剤、工業用フッ素源 |
ケイフッ化ナトリウム | 白色結晶、水に可溶、腐食性あり | 殺虫剤、金属表面処理、歯磨剤成分(フッ素源) |
重クロム酸カリウム | 橙赤色結晶、水に溶ける、強酸化剤、発がん性あり | 酸化剤、皮なめし、写真現像、木材防腐剤 |
重クロム酸ナトリウム | 橙色結晶、水に溶ける、強酸化性 | 染料・顔料製造、皮なめし、洗浄剤、金属表面処理 |
重クロム酸アンモニウム | 橙赤色結晶、水に溶ける、強い酸化性 | 感光剤、酸化剤、金属表面処理、印刷版作成 |
シュウ酸 | 無色結晶。水に可溶。弱酸性。 | 漂白剤、金属洗浄剤、染色助剤摂取で腎障害を起こす。致死量は小さい。皮膚や目に刺激。 |
シュウ酸ナトリウム | 白色結晶性粉末。水に可溶。 | 漂白剤、金属クリーナー、化学試薬摂取で中毒性あり。腎臓に悪影響。皮膚・目に刺激。 |
シュウ酸水素アンモニウム | 白色結晶。水に可溶。 | 還元剤、分析用試薬高濃度で吸入や経口摂取により有害。刺激性。 |
硫酸第二銅 | 青色結晶。水に溶けやすい。 | 殺菌剤、農薬、電気めっき経口摂取で胃腸障害。皮膚や粘膜に強い刺激。長期曝露で肝障害など。 |
塩化第二銅 | 黄褐色結晶。水に溶けやすく、湿気に弱い。 | 顔料、木材防腐剤、触媒吸入・経口摂取で毒性。皮膚や目に有害。長期曝露で中毒の可能性。 |
塩基性炭酸銅 | 緑青色の粉末。水に不溶。 | 顔料、防腐剤、殺虫剤など銅中毒を起こす可能性あり。長期曝露で肝臓や腎臓に悪影響。 |
二酸化鉛 | 暗褐色粉末。水に不溶、酸に溶解。強力な酸化剤。 | 電池(鉛蓄電池)材料、顔料鉛中毒を引き起こす。発がん性が疑われる。神経系、消化器系への影響。 |
一酸化鉛 | 黄色~赤色の粉末。水に不溶。熱で分解し酸化鉛を生成。 | 陶器の釉薬、顔料、ガラス製造鉛中毒の原因。神経系や腎臓に障害を与える。皮膚接触・吸入に注意。 |
酢酸鉛 | 無色~白色結晶。水に可溶。甘味がある。 | 染料の媒染剤、化学試薬、金属コーティング有毒。鉛中毒を引き起こす。慢性的な摂取で神経・血液障害を招く。 |
炭酸バリウム | 白色粉末。水に不溶。酸に溶解しバリウム塩となる。 | 陶磁器の釉薬、顔料、光学ガラス製造経口摂取で致死的。筋肉麻痺や呼吸困難を引き起こす。劇物に分類。 |
塩化バリウム | 白色結晶。水に可溶。味は苦く毒性あり。 | 分析試薬、顔料製造、電子部品高毒性。誤飲により中毒や死亡の恐れあり。神経・筋肉に作用。 |
水酸化カリウム | 白色固体またはペレット。強アルカリ性。水に非常によく溶け発熱。 | 石けん製造、漂白剤、電解液、化学合成強腐食性。皮膚・目に激しい損傷を与える。吸入・摂取で重篤な影響。 |
水酸化ナトリウム | 白色結晶またはペレット。強アルカリ性。吸湿性あり。 | 石けん・洗剤製造、製紙、排水処理、化学反応剤強腐食性。皮膚・粘膜への接触で火傷。誤飲で食道・胃に重篤な障害。 |
アンモニア水 | 無色液体。刺激臭。アルカリ性。アンモニアガスを放出。 | 洗浄剤、肥料、写真現像、分析試薬吸入で呼吸器刺激。濃度が高いと中枢神経障害。皮膚・目への刺激も強い。 |
塩酸 | 無色~淡黄色の刺激臭のある液体。強酸性。揮発性あり。 | 金属洗浄、酸洗い、pH調整、試薬強腐食性。吸入・接触で呼吸器・皮膚・目に障害。高濃度で重篤な健康被害。 |
硝酸 | 無色~淡黄の液体。強い酸性・腐食性。揮発性あり。 | 肥料・爆薬原料、金属加工、酸化剤強酸・強腐食性。吸入や接触で重篤な損傷。発がん性物質との反応性あり。 |
硫酸 | 無色~褐色の粘性液体。無臭。強酸性。 | 化学肥料、鉛蓄電池、金属加工、洗浄剤強腐食性。皮膚や目に深刻な損傷を与える。吸入も危険。熱を発し発火の恐れ。 |
ダイアジノン | 無色~黄褐色液体。においあり。有機リン系殺虫剤。 | 農業用殺虫剤神経毒。皮膚吸収でも中毒。アセチルコリンエステラーゼ阻害。 |
DDVP(ジクロルボス) | 無色~淡黄液体。揮発性あり。刺激臭。 | 室内用殺虫剤、農薬強い神経毒。吸入・皮膚接触で中毒症状。急性毒性が高い。 |
トルエン | 無色透明液体。特有の甘い香り。揮発性あり。 | 溶剤(塗料・接着剤・インク等)、化学原料吸入で中枢神経抑制。長期曝露で肝・腎障害。可燃性。 |
フェノール | 無色~ピンクの結晶または液体。独特な刺激臭。水に可溶。 | 消毒剤、合成樹脂、染料中間体皮膚吸収で中毒。腐食性強く、接触で火傷。肝・腎・中枢神経に影響。 |
ベタナフトール | 白色結晶。弱い芳香。水にわずかに溶ける。 | 染料・防腐剤の中間体皮膚刺激、肝毒性、光感作性。取り扱いに注意。 |
アセトニトリル | 無色液体。甘いエーテル臭。揮発性。水と混和。 | 溶媒、DNA抽出、医薬品合成吸入・摂取で毒性あり。中枢神経抑制。代謝によりシアン化合物に変化。 |
アクリルニトリル | 無色液体。刺激臭。揮発性。可燃性。 | プラスチック原料、合成ゴム、繊維発がん性あり。吸入毒性。皮膚や目に刺激。揮発ガスが有害。 |
ベンゾニトリル | 無色液体。弱い芳香。水に難溶。揮発性あり。 | 有機合成中間体、染料・医薬品の原料吸入や皮膚吸収で中枢神経障害。燃焼でシアン化水素発生。 |
リンデン | 白色粉末。クロロ系有機化合物。水に不溶。 | 農薬(現在多くの国で使用禁止)神経毒。脂溶性で体内に蓄積。発がん性・内分泌かく乱作用あり。 |
アルドリン | 白色~淡褐色の粉末。塩素臭。水に不溶。 | 殺虫剤(現在は多くの国で使用禁止)脂溶性。肝毒性・神経毒性。慢性曝露で発がん性あり。 |
ディルドリン | 白色固体。アルドリンから生成。水に不溶。 | 殺虫剤(禁止薬物)中枢神経に強い毒性。環境残留性・生物濃縮性が高い。 |
クロルピクリン | 無色~淡黄の液体。強い刺激臭。揮発性高い。 | 土壌くん蒸剤、防腐・防カビ剤吸入で咳・呼吸困難・肺障害。催涙性が強く、皮膚や目にも強い刺激。 |
カルタップ | 白色~淡黄の結晶性粉末。無臭~弱いにおい。水に可溶。 | 農薬(殺虫剤、特にイネの害虫防除)神経毒。急性毒性あり。魚類や水生生物に高い毒性。 |
トルイジン | 無色~淡黄色の液体または結晶。アニリン系のにおい。水にやや溶ける。 | 染料・医薬品中間体、合成樹脂原料毒性・発がん性が懸念される。皮膚・粘膜刺激。中枢神経抑制。 |
メタノール | 無色透明な揮発性液体。特有のアルコール臭。水と任意の割合で混和。 | 有機溶媒、燃料、ホルムアルデヒドの原料など極めて有毒。摂取・吸入で失明や死亡の恐れ。中枢神経・視神経障害。 |
酢酸エチル | 無色の揮発性液体。甘い果実のような香り。水とやや混和。 | 接着剤、塗料、印刷インキなどの溶媒揮発性が高く吸入で中枢神経抑制。目・皮膚への刺激あり。引火性が高い。 |
クロロホルム | 無色透明の揮発性液体。甘い芳香。水にほぼ不溶。 | 有機合成溶媒、抽出溶媒、冷却剤(過去)肝毒性・腎毒性あり。発がん性の疑い。中枢神経抑制。吸入・接触は危険。 |
メチルエチルケトン | 無色の揮発性液体。甘く刺激的なにおい。水に可溶。 | 溶剤(塗料、接着剤、印刷インクなど)吸入でめまい・眠気。皮膚や目に刺激。可燃性。高濃度で中枢神経抑制あり。 |
二硫化炭素 | 無色または淡黄色の揮発性液体。腐った卵様のにおい。水に不溶。 | 合成繊維原料、ゴムの加硫助剤、溶媒高毒性。吸入で中枢神経障害、肝・腎障害。慢性曝露で精神症状を引き起こす。 |
ブロムメチル | 無色の揮発性液体または気体。甘い刺激臭。水にわずかに溶ける。 | 土壌くん蒸剤、殺虫剤(多くの国で使用規制)高毒性。吸入で肺炎や神経症状。発がん性疑いあり。環境への残留性にも注意。 |
3.毒劇物の貯蔵方法
化学物質貯蔵方法
シュウ酸 | 密閉容器に入れ、乾燥した涼しい場所で保管。湿気を避け、直射日光を避ける。 |
ヒ素 | 密閉容器に入れ、通気性の良い乾燥した場所で保管。湿気や直射日光を避ける。 |
三酸化ヒ素 | 密閉容器で冷暗所に保管。湿気を避け、適切な換気が確保された場所で保管する。 |
硫酸銅 | 密閉容器で湿気を避け、乾燥した涼しい場所に保管。直射日光を避ける。 |
硫酸亜鉛 | 密閉容器に入れ、湿気の少ない涼しい場所で保管。直射日光を避ける。 |
水酸化カリウム | 密閉容器に入れ、乾燥した冷暗所に保管。湿気を避け、直射日光を避ける。 |
水酸化ナトリウム | 密閉容器で湿気を避け、乾燥した場所に保管。水分が加わると反応を起こすため、湿気に注意。 |
シアン化ナトリウム | 密閉容器で冷暗所に保管。湿気や熱を避け、化学反応を引き起こさないよう注意する。 |
塩化第一スズ | 密閉容器で湿気を避け、乾燥した場所に保管。空気中の湿気と反応しやすいので注意が必要。 |
フェノール | 密閉容器に入れ、乾燥した涼しい場所で保管。湿気や直射日光を避ける。 |
ベタナフトール | 密閉容器で乾燥した涼しい場所に保管。湿気を避け、直射日光を避ける。 |
水酸化カリウム | 密閉容器に入れ、乾燥した冷暗所に保管。湿気に反応しやすいため、湿気を避ける。 |
水酸化ナトリウム | 密閉容器で湿気を避け、乾燥した場所に保管。水分が加わると反応を起こすため、湿気に注意。 |
シアン化ナトリウム | 密閉容器で冷暗所に保管。湿気や熱を避け、化学反応を引き起こさないよう注意。 |
硝酸亜鉛 | 密閉容器に入れて、乾燥した冷暗所で保管。湿気を避け、適切な換気を確保する。 |
クロム酸ナトリウム | 密閉容器で乾燥した涼しい場所に保管。湿気や直射日光を避ける。 |
カリウム | 密閉容器で冷暗所に保管。水分と反応して危険を生じるため、湿気を避ける。 |
ナトリウム | 密閉容器で冷暗所に保管。水分と反応し爆発を起こす可能性があるため、湿気を避ける。 |
リン化亜鉛 | 密閉容器で乾燥した冷暗所に保管。湿気に反応して毒性のあるガスを発生させるため、湿気を避ける。 |
水酸化カリウム | (再度)密閉容器に入れ、湿気を避けて涼しい場所で保管。湿気を吸収しやすいため、注意。 |
水酸化ナトリウム | (再度)密閉容器で湿気を避け、乾燥した場所に保管。水分と反応しないように注意。 |
硫酸 | 密閉容器で乾燥した涼しい場所に保管。湿気や直射日光を避ける。 |
黄燐(白燐) | 水中に完全に沈めて保管(空気中で自然発火の恐れあり)。冷暗所に保管。 |
カリウム | 密閉容器で鉱油中またはパラフィン油中に保管。水分と反応するため乾燥・冷暗所で。 |
ナトリウム | カリウム同様、鉱油中で密閉し冷暗所に保管。湿気厳禁。 |
メタノール | 密閉容器に入れ、換気の良い冷暗所に保管。引火性があるため火気厳禁。 |
アセトニトリル | 密閉容器で換気の良い冷暗所に保管。引火性があるため、火源を避ける。 |
トルエン | 密閉容器で冷暗所に保管。換気必須。引火性・揮発性が高いため火気厳禁。 |
酢酸エチル | 密閉容器で冷暗所に保管。揮発性・引火性があるため火気厳禁。換気の良い場所で。 |
クロム酸塩 | 密閉容器に入れ、冷暗所に保管。酸化性があるため可燃物と離して保管。 |
重クロム酸塩 | クロム酸塩と同様に密閉容器・冷暗所保管。酸化性が強く、可燃物と混在させない。 |
硝酸塩(例:硝酸カリウム等) | 密閉容器で冷暗所に保管。酸化性があるため可燃物と離して保管。 |
塩素酸塩 | 密閉容器で冷暗所に保管。摩擦・衝撃に敏感なため、衝撃を避ける。可燃物厳禁。 |
過塩素酸塩 | 密閉容器で冷暗所に保管。極めて強い酸化剤であり、熱・衝撃に注意。可燃物と隔離。 |
無機銀塩 | 密閉容器に入れ、冷暗所で保管。光により分解しやすいため遮光容器が望ましい。 |
塩化第一水銀(Hg₂Cl₂) | 密閉容器で乾燥・冷暗所に保管。有毒のため他物質と混ざらないよう隔離。 |
塩酸 | 耐酸性密閉容器で換気の良い冷暗所に保管。揮発性・腐食性があるため金属と接触厳禁。 |
硝酸 | 密閉耐酸容器で冷暗所に保管。酸化性が強く金属や有機物と接触しないよう注意。 |
硫酸 | 密閉容器で乾燥した涼しい場所に保管。吸湿性・腐食性が強いため水分と隔離。 |
フッ化水素酸 | 専用のポリエチレン容器等に入れ、冷暗所で保管。ガラスや金属を侵すため容器選択に注意。 |
過酸化水素水 | 遮光密閉容器で冷暗所に保管。分解しやすいため熱・光・金属と接触させない。 |
クロロホルム | 密閉容器に入れ、冷暗所で保管。揮発性・毒性があるため換気を良くし火気厳禁。 |
4.毒劇物の廃棄方法
種類 代表例 廃棄方法の概要
強酸 | 硫酸、塩酸、硝酸など | 中和処理後(希釈アルカリで中和)に専門業者へ。大量の場合は委託処理が基本。 |
強アルカリ | 水酸化ナトリウム、カリウムなど | 酸で中和(希釈酸使用)後、pH調整し専門業者へ。直接排水は禁止。 |
無機シアン化合物 | シアン化ナトリウムなど | 酸化剤(次亜塩素酸ナトリウム等)による分解処理後、専門業者へ委託。 |
二硫化炭素 | 有機溶媒 | 換気設備下で密閉容器に保管、揮発性高いため廃溶剤として専門業者へ。 |
塩素酸塩 | 塩素酸ナトリウムなど | 可燃性・爆発性あり、他物質と混合禁止。専門業者による焼却処理。 |
黄燐 | 毒物・発火性高い | 水中保管後、専門の処理施設にて酸化処理。個人での処理は禁止。 |
シュウ酸 | 結晶または水溶液 | 中和(弱アルカリで)後、pH調整して処理。少量なら廃液処理、量が多ければ委託。 |
有機リン製剤 | パラチオンなど農薬類 | 毒性が強く焼却処理が原則。都道府県等の農薬廃棄回収制度を利用。 |
その他の有機物 | 溶剤類、試薬など | 種類によって分類後、廃有機溶剤・試薬として専門業者に委託処理。 |
無機亜鉛塩 | 硫酸亜鉛、塩化亜鉛など | 水酸化物として沈殿処理後、産廃扱い。もしくは専門業者へ金属廃液として委託。 |
カドミウム化合物 | 酢酸カドミウム、硫化カドミウム等 | 特別管理産業廃棄物。中和・沈殿不可。密封容器で専門業者に処理委託。 |
無機銀塩 | 硝酸銀、塩化銀など | 還元処理(たとえば鉄粉で金属銀化)後、銀回収。回収困難な場合は専門業者へ。 |
無機銅塩 | 硫酸銅、塩化銅など | 水酸化銅として沈殿処理、または廃液として専門業者に委託。 |
鉛化合物 | 酢酸鉛、硝酸鉛など | 中和・沈殿処理後も毒性残留のため、密封・区分保管し、専門業者に委託。 |
フッ化水素酸 | 強腐食性酸 | ポリエチレン容器で密封保管。中和不可。専門業者による特別管理産廃処理。 |
ケイフッ化水素酸 | 六フッ化ケイ素酸 | フッ化水素酸同様に強腐食性。密封容器にて保管、特別管理産廃として委託処理。 |
クロム酸塩 | クロム酸ナトリウム、カリウムなど | 還元処理(Cr⁶⁺→Cr³⁺)後、水酸化物沈殿。処理後も廃棄物として委託が安全。 |
重クロム酸 | 重クロム酸カリウムなど | 上記と同様。還元処理(酸性亜硫酸ナトリウムなど)後、専門業者に委託。 |
無機水銀化合物 | 塩化水銀、硫化水銀など | 極めて毒性が高い。密封保管後、特別管理産業廃棄物として専門業者に引き渡し。 |
5.毒劇物の識別方法
化合物 名識別方法(主な反応・特徴)
黄燐(P₄) | 空気中で自然発火(空気に触れると発煙、暗所で燐光)、炭酸ナトリウム溶液に可溶 |
無機シアン化合物(CN⁻) | 硫酸鉄(II)+加熱 → プルシアンブルー(青色沈殿)生成、またはピクリン酸との反応で黄色沈殿 |
塩化第二水銀(HgCl₂) | スズ(II)塩で還元 → 灰黒色の金属水銀、アンモニア水で白色沈殿→灰色 |
硝酸第一水銀(Hg₂(NO₃)₂) | アンモニア水で黒色沈殿(HgNH₂NO₃と金属Hgの混合)、希塩酸で白色沈殿 |
塩化第一水銀(Hg₂Cl₂) | 光で黒変、アンモニア水添加で黒色(HgとHgNH₂Clの生成) |
セレン(Se) | 濃硝酸で溶解、還元で赤色沈殿(非晶質セレン)、炎色反応なし(非金属) |
ヒ素(As) | マーシュ試験(AsH₃発生 → 加熱で黒褐色鏡状ヒ素)、銀硝酸紙による検出(黄褐色変化) |
フッ化水素(HF) | ガラスを腐食(フッ化カルシウムなどと生成)、ガラス板に滴下→曇る、Ca²⁺と反応で白色沈殿(CaF₂) |
無機亜鉛塩(Zn²⁺) | NaOHで白色沈殿(Zn(OH)₂)→過剰NaOHで可溶、H₂Sで白色沈殿(ZnS) |
アンチモン化合物(Sb³⁺/⁵⁺) | H₂Sで橙赤色沈殿(Sb₂S₃またはSb₂S₅)、すずイオンと還元→金属Sbの黒色沈殿、濃塩酸で可溶、過剰NaOHで可溶 |
塩素酸塩(ClO₃⁻) | 二酸化硫黄などの還元剤で塩素ガス発生(におい)、濃硫酸と加熱でCl₂発生 |
過酸化水素水(H₂O₂) | 酸性条件下でKI溶液+デンプン紙 → 青色(I₂生成)、MnO₂またはFe²⁺と反応 → 酸素泡の発生 |
カドミウム化合物(Cd²⁺) | H₂Sで黄色沈殿(CdS)、NaOHで白色沈殿(Cd(OH)₂)、アンモニア水に難溶 |
無機銀塩(Ag⁺) | Cl⁻と反応 → 白色沈殿(AgCl、光で黒変)、アンモニア水で溶け、過剰塩基でも可溶、H₂Sで黒色沈殿(Ag₂S) |
クロム酸塩(CrO₄²⁻) | 酢酸鉛や硝酸銀と反応 → 黄色沈殿(PbCrO₄, Ag₂CrO₄は赤褐色)、酸性化 → 橙赤色(Cr₂O₇²⁻)に変色 |
ケイフッ化水素酸(H₂SiF₆) | ガラス腐食性、BaCl₂と反応 → 白色沈殿(BaSiF₆)、硫酸と加熱 → シリカゲルのような沈殿 |
シュウ酸(C₂H₂O₄) | カルシウム塩と反応 → 白色沈殿(CaC₂O₄)、還元性あり(MnO₄⁻を脱色)、加熱でCOとCO₂発生 |
無機銅塩(Cu²⁺) | アンモニア水で深青色錯体([Cu(NH₃)₄]²⁺)、NaOHで青白色沈殿(Cu(OH)₂)→加熱で黒変(CuO)、H₂Sで黒色沈殿(CuS) |
鉛化合物(Pb²⁺) | HClで白色沈殿(PbCl₂)、熱水で溶解、H₂Sで黒色沈殿(PbS)、クロム酸カリウムと反応 → 黄色沈殿(PbCrO₄) |
バリウム化合物(Ba²⁺) | 硫酸塩と反応 → 白色沈殿(BaSO₄:難溶)、炎色反応で黄緑色 |
塩酸(HCl) | アンモニウムイオンと加熱で白煙(NH₄Cl)、AgNO₃と反応で白色沈殿(AgCl)、におい(刺激臭)、揮発性あり |
硝酸(HNO₃) | Cuに作用 → NO₂(赤褐色ガス)発生、たんぱく質変性(キサントプロテイン反応)、環境中で揮発性酸 |
硫酸(H₂SO₄) | バリウム塩(Ba²⁺)と反応 → 白色沈殿(BaSO₄)、脱水作用(糖や紙を黒変)、揮発性なし、粘性液体 |
水酸化ナトリウム(NaOH) | フェノールフタレインで赤色呈色(強塩基性)、CO₂と反応で白色沈殿(Na₂CO₃→NaHCO₃)、金属Naと区別可能(固体で反応性なし) |
水酸化カリウム(KOH) | NaOHと同様の反応(フェノールフタレインで赤色)、炎色反応で**紫色(カリウム炎色)**が識別点 |
アンモニア水(NH₃·H₂O) | ガラス棒に酢酸 → 白煙(NH₄CH₃COO)、赤色リトマスを青変、銅(II)塩と反応で深青色錯体([Cu(NH₃)₄]²⁺) |
フェノール(C₆H₅OH) | FeCl₃水溶液で紫色呈色(フェノール類特有の呈色反応)、弱酸性でNaOHに可溶、臭気あり |
β-ナフトール(C₁₀H₇OH) | FeCl₃で青~緑色呈色、アルカリで可溶、有機溶媒に溶けやすい、ジアゾカップリングで鮮やかな色のアゾ色素生成 |
クロロホルム(CHCl₃) | 次亜塩素酸ナトリウム+塩基性条件で加熱 → イソシアン化水素のにおい(異臭)、臭気(甘い香り)、水に不溶、揮発性、比重>1 |
メタノール(CH₃OH) | 加熱で無色の可燃性蒸気 → 青い炎で燃焼、KMnO₄酸化でギ酸生成、臭気あり(アルコール臭)、ホルムアルデヒドへの酸化可 |
コメント